深紅/野沢尚

深紅 (講談社文庫)
この人の恋愛ドラマは大嫌い。基本的にはドラマは、嫌い。だけど、小説はすごく好き。
小説を読むようになってからは、少しドラマの見方も変わったかも。恋愛だと思えてた内容は家族・家庭がテーマにしたかったのか、とわかるようになった。
小説を読んでいると、本当にこの人は人間のたくさん含んでいる感情のヒダや渦を感じ取れる人なんだなぁ…と思っていたのだけど。今となってはこの本を読みながらふと「だから、この人、自殺しちゃうんだろうなぁ…」とか思った。この人間描写は、ものすごいエネルギーを放出するのだと思う。
破線のマリス」や「リミット」のようにミステリー色は、ないので、なおさらこの本は読んでて読み手である自分の感情にも突きつけられた。ラストへ向かうここが最後の感情のドロドロだっていうところまで読んだ18日の夜、私は寝ながらこれまでの自分のいろんな体験だとか感情が小説のストーリーの混ざりながら次々と出てきた。寝た気がしなかった。ずっと起きているような感覚だった。


大学院のある教授は、50代になってから研究テーマを変えてある人物の生涯について発達心理学から考察するという研究をしていた。心理学の研究方法には人物に焦点をあてるもの、物語に焦点をあてるものなどがあると一般教養で習ってはいたものの、本当に人物を研究しているその教授にはいまいちピンと来なかったけど、いまならなんとなくわかる。なんとなくだけど。


野沢さんは、父親を許すことができたのだろうか。

そんなことを、この本から感じ取った。